小熊英二さん(慶應義塾大学総合政策学部教員)

Oguma  『東海道中膝栗毛』のヤジさんとキタさんは、恋人どうしの関係であったと作品の最初の人物紹介のところで書いてある。江戸時代の人たちは、それを読んでも何とも思わなかった。日本にホモフォビアの傾向が現れてくるのは、明治以降だというのは定説だ。
 この作品は、岩波文庫に日本古典の名作として収録されているし、学校の教科書にもよく使われている。ただし、教科書に載る場合には、二人がどういう関係だったかは教えられない。そんな不自然な社会のほうが、どうかしている。もっとあたりまえの社会に、なってもいいはずだ。