田間泰子さん(大学教員)

 『忘れてほしゅうない』というドキュメンタリーのなかに、とても素敵なせりふがある。「女の人がどんな子どもを産んだかて、ええやんか」(優生思想を問うネットワーク制作)。
 この世に産み出される存在への言祝が、私たちには必要だ。ついでに、子どもを産めなくたって、ええやんか。もちろん、いっぱい産んだってええやんか。「同性」を愛したって、ええやんか。と思う。

 う〜ん、でも「同性」ってどういうこと?
 私のなかでは、性別というのは人を好きになることに無関係な項目だ。というより、そもそも「性別」で、人々を「好きになれる人」と「好きになれない人」というたった2つに分けることができるなんて、信じられない。私にとって重要なことは、ただ「その人」を好きになるかどうかだけだ。私は「女」のなかの一人として愛するのではない。ただ単に私自身として存在するその結果として、ある人を愛しく思うのだ。
 「男/女」という枠からどうしてもハミ出てしまい、そんな自分を肯定したくてフェミニズムに走った私だが、その目的はただ一つ……多様な存在のしかたを大切にしたいということ。だって、どうせみんな一人一人違うのだから。「男/女」とか、「白色/有色」とか、「××人/外国人」とか、とにかく私は2項対立図式で人の存在を切り捨てる思想が大っ嫌いだ。さまざまな社会制度が常にその図式を再生産しようとしているが。

 だから、「ホモフォビア」にもちろん反対なのだが、同時に「ホモフォビア反対」が逆機能的に「ホモ」という固定した存在を生み出すことも懸念する。私は「ホモ/ヘテロ」という図式のなかに入りたくないからだ。「ホモフォビア反対」は「ホモセクシュアリティOK」ではなく、「虹色大好き」になってほしい。ちょうど虹が、ある文化では7色、他の文化では13色、と様々に見えながら架け橋となるように。
 やっぱり、そのための第一歩は、Act Against Homophobia!でしょう。