井上輝子さん(和光大学教員)

人々の性は、きわめて多様なので、誰が性的少数者かとは、一概に言えないと思いますが、一般的用法に従って、自分のセクシュアリティが同性に向いている人、自分のジェンダーアイデンティティに不具合を感じている人などを、性的少数者と呼んでおきます。少数者というものは、多くの場合、多数者から差別や抑圧を受けやすいですが、特に性にかかわる少数者は、家族や友人などの身近な人たちに対してさえも、なかなか自分の実情を打ち明ける(カミングアウト)ことができずに、人知れず悩む例が多いのではないでしょうか。差別と偏見があまりにも蔓延しているので、性的少数者の人たちは、ありのままの自分を表明しにくいし、それゆえまた、性的少数者の人たちの姿は人々の目に見えないものとなりがちだという悪循環が続きます。

尾辻さんのように、自身が性的少数者であることを公的に表明する人たちが増えてくると、人知れず苦しんでいる人たちも、自分は1人ではないと勇気づけられるでしょうし、また自分は性的多数派だと思っている人たちの中にも、自分の性的指向は本当はどうなのだろうか等と、考え始める人たちが出てくるのではないでしょうか。今回のキャンペーンが、悪循環を断ち切るきっかけとなることを期待します。