河地和子さん(大学教員)

 「世の中は多様性を認めるようになった」「ひとり一人の個性を認めるようになった」。最近そのような印象を持っている人が増えているが、本当に多様性が認められ、個性が偏見なく受止められている社会になっているのだろうか?

 同性愛者に対する社会の偏見を見れば、残念ながら答えはNOであると言わざるを得ない。マスメディア(特にテレビ)は往々にして「デフォルメ」した情報を同性愛者に関して流す。同性愛者を「おかま」「あっち系の人」などと呼び、それがいかに侮辱であるかを意識していない。また話題が同性愛者に及ぶと意味なくニヤニヤ笑う出演者も多い。同性愛者はいまだ「ジョーク」として扱われている状況にある。

 しかし同時に、徐々にではあるが、同性愛者は「性的に異常な性格」であるわけではない・・・異性愛と共に健康な性的指向のひとつであるという、きちんとした理解を持つようになった人が増えていることも事実である。

 わたしは大学で女性学、ジェンダースタディーズを担当してきた教員であるが、担当してきた過去20年間を振り返った時、そのような印象を持つ。最初の数年間は女性が直面する差別問題に終始し、同性愛を授業のテーマにすることはなかった。やがて学生の中から「先生、この授業では同性愛者について学ばないんですか?」という質問が来るようになり、テーマのひとつとして授業で議論するようになった。

 最近では自分が同性愛者であることを隠す必要がない環境が少しずつできてきたのだろう。同性愛者、異性愛者が一緒になって同性愛者が抱える問題やドメスティック・パートナー制度(異性、同性、性的結合、同居の有無にかかわらず、パートナーとして選択の自由を認める制度)についてグループ・プレゼンテーションをする者たちも増えた。こうした若者が少なからずいることも知ってもらいたい。ひとり一人が多様性をもっと認め、もっと風通しのよい社会にしてゆきたいではないか。