国際的な取り組みにあたって

国際反ホモフォビアの日」は、世界中どの国・地域でも同じように開催されるのですか?

それはあり得ないと思います。ホモフォビアの形は、それぞれの社会や地域により異なるため、それに対する運動も異なった方法がとられます。

「途上国」といわれるの多くの国では、主に女性に対する異性との強制結婚という問題があり、いわゆる「先進国」の国の多くで議論の中心となっているのは同性間の結婚の権利についてです。ある社会では、男性同性愛者が社会的追放を受けたり処刑され、女性同性愛者は家に閉じ込められるか、または隔絶された一生を強要されます。ホモフォビアは、あるときは神の名の下に、あるときは科学の名の下に実践されます。同性愛が非難され、トランスセクシュアルが「容認」される場合もあれば、時にはその逆であることもあります。バイセクシュアリティについても、状況によって、軽い過ちと見なされることもあれば、最大の不道徳と見なされることもあります。

ホモフォビアに立ち向かうやり方として、たくさんの実現可能な方法があります。そして、それぞれの地域において実践されてきたさまざまな行動も、全体での連携を通して、成果がより目に見えるものとなるのです。事実、これまで数十年の間に、数え切れないほどたくさんの運動の前向きな成果が見られます。「LGBTプライドデー」の行進(プライドマーチ)は世界中で開催され、その数は増加の一途をたどっています。1996年、南アフリカ共和国は、性自認または性的指向に関わらず、すべての市民が平等であることを憲法により確認し、LGBTの人たちの平等な権利について先頭となって行動しています(まもなく、エクアドル南アフリカ共和国に続く予定です)。他の例としては、過去数年間、アメリカ合衆国では、トランスジェンダー/トランスセクシュアル嫌悪による暴力犯罪の犠牲者を追悼する日が設けられています。それ以来、このトランスジェンダー/トランスセクシュアル嫌悪による暴力犯罪犠牲者を悼む日は、スペイン、フランス、チリそしてカナダでも実施されています。カナダが2003年から「反ホモフォビアの日」を設けていることは、「国際反ホモフォビアの日」の国際的承認を望む私たちにとって励みとなることです。

最後に、地域や国内において率先して起こす運動の枠を超え国際的運動を進めるうえで、私たちが注目すべき2つのことがあります。まずひとつは、2003年に、ブラジルがLGBTの人たちの権利を承認するように国連人権委員会(UNCHR)に決議案を提出したことです。私たちは、今日まで直面してきた困難に屈することなく、ブラジルによる先導的行動を支持するべきであり、この決議案がなるべくはやく採択されることを願います。もうひとつは、ブラジルによる決議案提出よりもかなり前のことですが、とても重要なことです。1990年5月17日、世界保健機構(WHO)総会が、国際障害疾病分類リストから同性愛を削除しました。この動きにより、一世紀以上続いた医学におけるホモフォビアに終止符が打たれることになりました。私たちは、国連人権高等弁務官事務所(ORCHR)および国連人権委員会が、WHOの歴史的決定に続き「国際反ホモフォビアの日」を公的に承認することにより、政治的、社会的および文化的局面におけるホモフォビアを非難することを望みます。WHOの決定は、LGBTコミュニティのメンバーにとっての歴史的な日であり、そして、強力なシンボルとなる日でもあります。ここに、私たちは、毎年5月17日を「国際反ホモフォビアの日」とすることを提案し、国連人権高等弁務官事務所、国連人権委員会をはじめとする国際機関がこれを公的に承認するよう求めます。