北原みのりさん

ホモフォビア

「あんたらみたいな人間は歌舞伎町にでも行け!」と、言われた。
傍目からは「男」みたいに見える私のパートナーが、「女」だということが分かった時。隣の家の住人から。
「んー、二丁目のこと?」
と思ったけれど、そんなことは口に出さないまま、悔しくて奥歯をかんだ。

罵声を浴びることには、バイブ屋のフェミとしては慣れてきたつもりだけれど、あからさまな「差別」が剥き出しになった時には、単純な怒りや、深い悲しみというものではなく、黒い憎しみのようなものが自分の中にあることを意識する。
本当は、奥歯をかむんじゃなくて、つかみかかってゆきたい衝動もあった。
本当は、つかみかかるどころじゃなくて、ひきずりたおして罵倒したくもあった。
でも、私とパートナーがやったことは、ただただ「何だって?!」とビックリ呆然、だけだった。

こんな時、どうしたらよいんだろう。
「かわいそうな時代遅れなバカ」
と、相手を哀れに思えばいい?
それとも?

私は、まだ分からないでいる。