「ホモフォビア:私たちすべてがどれだけ犠牲を払っているか」

1992年に、アメリカのLGBT活動家であるWarren J. Blumenfieldが「Homophobia : How we all pay the price(ホモフォビア:私たちすべてがどれだけ犠牲を払っているか)」という本を出版しました。その本の中から、内容の一部を紹介します。

ホモフォビアの4つのレベル

ホモフォビアは全ての人々−男性、女性、同性愛者、異性愛者、両性愛者、子ども、大人、老人−に影響を与えます。ホモフォビアは以下の4つのレベルで現れていると思います。ただし、これらは明確に分かれているようで、実は相互に関連しながら作用しています。

1. 個人のレベルでのホモフォビア…ここでは、個人が信じているもの(つまり偏見)があてはまります。例えば、セクシュアルマイノリティを、自らの欲望をコントロールする力のない不運な生き物として同情されるに値すると捉えること。憎悪されるべき対象とみなすこと。精神的に異常がある、遺伝子上の障害がある、あるいは不運にも適応力のない人と定義すること。その存在が自然の「法」に矛盾していると捉えること。精神的に不道徳であるとみなすこと。伝染病をもつ浮浪者であり、不愉快だと捉えること、などがあげられます。要するに、性的少数者異性愛者より概して劣っているとみなす考え方です。

2. 個人間のレベルでのホモフォビア…個人の先入観や偏見が個々人間の関係に影響を及ぼし、偏見がより目に見え、影響力を持つ形、すなわち差別に変形してしまうときに、個人間レベルでのホモフォビアがあらわになります。個人間のホモフォビアの例としては次のようなことがあります。個々人ないし集団を侮辱し中傷すること。LGBTに対する悪意や偏見に満ちた言葉を使ったり、そういった「冗談」を言ったりすること。極端な形の暴力と同様、言葉の上でないし肉体的に嫌がらせや脅迫を行うこと。LGBTであることで友人やその他の仲間、同僚、家族などからサポートを受けられず、拒絶され、関係を放棄されること。公共サービスや保険会社による担保範囲の設定や、企業主による雇用が、実際のあるいは見た目で想像される性的アイデンティティに基づいてなされること。これらは数多くの例の一部にすぎません。

3. 制度のレベルでのホモフォビア…政府や企業、教育や宗教における組織、またその他の専門的な組織が、性的指向や性的アイデンティティに基づいて組織的に差別を行うことがあります。時には法律や規則、政策がそのような差別を事実上強要することもあります。ほとんどの制度はセクシュアルマイノリティを支持する方針をとっておらず、多くの制度はそれらのマイノリティだけでなく彼ら彼女らを支持する異性愛者に対しても事実上否定的に作用します。

4. 文化(時に集合的、社会的とも呼ばれる)のレベルでのホモフォビア…社会規範や行動規則が、明確に法や政策の中に書かれているのではないにもかかわらず、社会の中での抑圧を合法化するように作用することがあります。これはメディアの中や歴史上におけるLGBTの存在を全く無視したり、または反対にLGBTのことを取り上げたとしても、LGBTに対する否定的なステレオタイプを押し付けるばかりであるようなことにつながっています。

LGBTについての認識を高め、ホモフォビアを減らすために私たちができること

1. 自分の持っている思い込みに気づいている。そして、職場や学校で、また、家族のなかにLGBTの人たちがいるかもしれないということを常に頭においておく。

2. 自分が異性愛者であると思う人は、自分が異性愛者であるとわざわざ言う必要のある機会がいかに少ないかということについて考える。

3. LGBTに対してポジティブな本や雑誌を読み、自分の利用する図書館にもそれらを配置するよう頼んでみる。

4. LGBTへのサポートを示すバッジをつけたり、Tシャツを着る。また、そのようなポスターを掲示する。

5. LGBTの文化についての催しやLGBTのコミュニティのイベントに参加する。

6. LGBTに対して悪意、偏見のある言葉やジョークに抗議する。

7. LGBTグループや組織を金銭的にサポートする。

8. 話し言葉にしろ書き言葉にしろ、普段セクシュアリティや人間関係について言及する際には、性の多様性を認めるような包括的で肯定的な言葉、あるいはジェンダー的に中立な言葉を使う。「レズビアン」「ゲイ」「バイセクシュアル」「トランスジェンダー」という言葉を肯定的な意味で語る。

9. 性的指向(セクシャルオリエンテーション)や性自認ジェンダーアイデンティティ)を反差別について考える際のカテゴリーの中に含む。

10. LGBTである被雇用者の同性のパートナーにも、他の被雇用者の異性のパートナーと同等の福利厚生を保障する。

11. 行政やメディア、組織をモニターし、LGBTについてのことが確実にかつ正確に取り扱われるようにする。

12. LGBTのことについてサポートすると表明している選挙の立候補者をサポートし、実際にそのような人たちに投票する。

13. ホモフォビアLGBTの人たちのことについて、話し合いの場を持ったりワークショップを企画したりする。またそれらを教育のカリキュラムに含めたり、大学などのアカデミックな場でホモフォビアLGBTに関する研究などのトピックを取り上げてゆく。

14. LGBTの人々とLGBTをサポートする異性愛の人々の連携を目的とするサポートグループを育てる。

15. 学校や職場で「Safe Space」プログラム(多様な性のあり方を認める、安全な空間を「Safe Space」として作り出すこと)を行ったり、参加したりする。

( 出典 “Homophobia: How we all pay the price” , Warren J. Blumenfeld (eds) (1992) Boston: Beacon Press )