釜野さおりさん(研究職・非常勤講師)

 大学のある授業では、例年、学生に知っているゲイやレズビアンの名前を挙げてもらう。数年前までは、「知らない」という答えが多く、留学生から、外国の男性が数名出てくればよい方だった。しかし最近は、日本の「男性」タレントの名がどんどん挙がるようになった。彼らの活動は、どんな形であれ、とりあえずは「ゲイ」の存在を「見えるもの」にしていることは確かだ。しかし、このリストにレズビアンの名が挙がったことはまだない。
 少しの時間を費やすだけでも、「ゲイだけじゃなくて、レズビアンもいるんだよ」「テレビの中だけじゃなくて、身近にもいるんだよ」ということは、比較的すんなり伝わりやすいような気がしている。しかし「そういう人たち」としてではなく、自分のこととして考えよう、異性愛主義というしくみを疑問視しようとなると、止まってしまう学生も出てくる。彼らは、「普通の社会」に出てしまったら、レズビアンやゲイのことなんて、異性愛主義のことなんて、全く考えなくなってしまうのではないか。
 そうはなって欲しくない。根強い異性愛主義的な思想、見えるホモフォビア・見えないホモフォビアの蔓延する世の中に立ち向かうために、私たちが個別にできることには、限界がある。しかし、多くの人たちと力を合わせ、組織的な取り組みを続けていけば、社会を変えられると信じたい。Act Against Homophobiaキャンペーンを心から支持します!